今回は、いま真っ盛りの花粉症のお話です。
発 行:国立横浜病院薬剤科 1999年3月発行
「花粉症」は、植物の花粉によって起こるアレルギー性疾患の一つです。
日本では、「スギ花粉症」が圧倒的多数を占めていますが、イネ、ヨモギ、ブタクサなど花粉症の原因となる花粉の種類は40種類にものぼると考えられています。
◎花粉症の歴史
日本で花粉症が正式に報告されたのは1961年のことで、その当時、スギ花粉はアレルギーを起こしにくいとも考えられていました。
ところが1964年(東京オリンピック1年前)に、杉並木で有名な栃木県日光地方でスギ花粉症が報告され、後の調査でスギ花粉症はこの発見以前にも存在したことがわかってきました。そして花粉症は1965年ごろから増加しはじめて、今や10人に1人は花粉症といわれる時代となりました。
◎スギ花粉症が激増した理由
最近になって花粉症患者が急増してきたのでしょうか。近年、スギ花粉症が急増してきた理由として、以下のことが考えられています。
1 花粉の増加
杉は日本の風土に適していて成長も早いため、杉の植林は1950年頃からさかんに行われました。杉は植林して30年たった頃から花粉を作り始めるので1980年頃には花粉生産量が急増することとなり、花粉生産量はこれからも増加していくことが予想されています。
2 都市部における花粉の再浮遊
花粉は風で運ばれて行き、やがて地面に落ちていきます。
乾燥したアスファルトやコンクリートに車が通ると道路の花粉が舞い上がって、空中の花粉濃度は瞬間的に数倍に上昇するという報告がされています。
最近の都心部の交通事情では、花粉は落ちては再浮遊を繰り返すこととなり、歩道を歩く人や道路沿いに住む人々は、始終、実際の花粉量の数倍量と接することとなります。
3 食生活の変化
卵や牛乳を大量に摂取するとアレルギーになりやすいとする報告があります。
また、赤身魚の中にはアレルギーつまり花粉症になりやすくなるのを抑制する物質が含まれています。
日本人の食生活が欧米化し、牛乳や卵の摂取量が増え、また魚よりも肉を多く食べる人が増えるなど、こうした食生活の変化が花粉症の増加に関係しているのではないかと考えられています。
4 大気汚染
花粉の飛散量はほぼ同じくらいでも、花粉症発症率は交通量の多い地区の方が3倍近く高くなったとする調査など大気汚染と花粉症の相関するという報告があります。
現在ではその原因のひとつとしてディーゼル車排出粒子があげられています。
◎花粉症の治療
花粉症の症状は、主に、鼻と目に現れます。
鼻の代表的な症状が、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」です。
目では、「目がかゆい、涙が止まらない、目の充血」などの症状が現れます。
花粉症を改善するのには、医療機関での治療が必要です。
花粉症の人は、花粉が飛散する時期に入る2週間くらい前から抗アレルギー薬を服用したり点眼することで、アレルギー症状が軽減することができるので効果的であるといわれています。
花粉症の症状がでてしまったら、悪化しないうちに対症療法をきちんと行なうことが大切です。
対症療法に用いる薬剤としては抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬と副腎皮質ステロイド剤があります。
抗アレルギー薬や坑ヒスタミン剤は、アレルギー反応のいろいろなプロセスに作用してヒスタミンというアレルギーを起こす原因物質が出てくるのを抑えます。
また、すでに出てしまったヒスタミンに対しても、ヒスタミンが血管や神経に刺激を与えるのを妨害してアレルギー症状が出るのを抑えます。
抗ヒスタミン剤や一部の抗アレルギー剤の内服薬は、人によって眠気がでることがありますが、眠気の副作用のない坑アレルギー剤や内服薬の他、点眼剤や点鼻剤などいろいろな剤形が開発されています。
車の運転や高所での作業をする方などは、医師に相談して適切な薬を選択してもらうことが大切です。
副腎皮質ホルモン剤には、炎症を抑える他、アレルギーなど過剰な免疫反応を抑える作用があるので、花粉症にはとても効果のある薬です。
花粉症の治療で副腎皮質ホルモンを使う時には、点眼薬や点鼻薬が主として用いられます。
但し、きちんと使わないと治療効果が現れないので、外用薬とはいえ、医師の指示どおりに使う必要があります。
また、根治的治療法として減感作療法があります。
アレルギーはいわば体質の病気なので、減感作療法は、いわば体質改善のための治療です。
減感作療法は、自分の花粉症のアレルゲンのエキスを極少量注射して、花粉に対する免疫を作りアレルギーの症状が軽くなるようにします。
しかし治療に長期間を要し、かなり根気のいる治療法ですが、ダニ(ハウスダスト)などで、1年中アレルギーで苦しんでいるヒトには推奨されています。
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