No.12 妊娠とくすり
 
今回は、妊娠と薬に関するお話しです。

発 行:国立横浜病院薬剤科 1998年11月発行

◎妊娠と薬
妊娠中あるいは妊娠の可能性のあるご婦人から「薬を飲んでも大丈夫でしょうか」という質問がしばしばありますが、実際に胎児の奇形や流・早産が報告されているために、妊娠中に絶対に服用してはいけない薬は少なく、短期間の薬の服用で胎児や妊婦に問題が起こった例はわずかです。
しかしながら大切な母親と生まれてくる赤ちやんの健康のために、妊娠中に薬を使うことが必要なときには、母体の体質、妊娠週数、薬の性質などを考えながら、医師が薬の種類と薬の量を決めています。
◎薬の胎児に対する影響
薬の胎児に対する影響は、妊娠週数によって異なります。
受精すると、卵は分割を続け、受精から14日を過ぎる頃に胎児は体の様々の器官を創る器官形成期に入ります。そして妊娠7週末には器官の基本的な形成が終わります。
この妊娠4週目から7週末ぐらいまでの時期は、胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要臓器ができていく時期ですので、治療に薬を用いる湯合に、医師が最も注意している期間です。
妊娠8週目に入ると、胎児の重要な器官の形成は終わっていますが、心臓、手、性器などの形成は進んでおり15週末ぐらいまでかかります。
この時期は、相対過敏期と呼ばれており、催奇形性の報告があるような薬の投与は極力差し控えるなど、薬の投与は慎重に行われています。
妊娠16週を過ぎると、薬の投与によって、奇形のような異常が胎児に形成される心配は、ほとんどなくなります。
この時期になると、母体に投与された薬は主として母体の胎盤から胎児へ入っていきます。
ただし、すべての薬が胎盤から胎児の中へ入って行くわけではありません。胎盤には、ふるいのような機能があり、薬によって胎盤を通過するもの、あまり通過しないもの、通過しにくいものがあります。
この時期に絶対に投与してはいけない薬は、少ないのですが、長期に薬を投与する際には、なるべく胎盤を通過しにくい薬を選択するなどの工夫がされています。
◎薬を服用する際の注意点
妊娠時には、胎児以外にも母体に対しても注意をしています。
体内では複雑な変化が起っているので、薬によっては妊娠という特殊な状況のために副作用が発現する可能性があります。
ですから、少し頭痛がするとか、風邪をひいたとかいって、家庭薬をすぐに飲むのではなく、かなず病院へ行く必要があります。
また、妊娠すると便秘になりがちになり、苦しいものです。
このような時には、下剤が効果的ですが、下剤によっては大量に服用すると子宮を収縮する作用のものもありますので、便秘の際には医師から処方してもらい、状態に応じた服用量を定めてもらう方法が安心です。
一方、妊娠時に起り易い疾患に対する薬(例えば、つわりに対する薬や貧血、妊娠中毒症に対する薬等)は、医師の指示の通りに服用する分には、心配をする必要はありません。
高血圧や糖尿病など、慢性的な病気にかかっているため、薬を飲んでいる方は、妊娠する前に医師に相談することをお勧めします。
医師は、細心の注意を払って安全かつ有効と認められる薬を処方しますので、安心して服用することができます。
いずれにしても、薬に関して不安や疑問があるときは、1人で悩まずに相談することが大切です。
◎妊娠と食事
妊娠中には、偏った食事をせず、栄養のバランスのよい食事を心がけて妊娠時期を過ごすことが大切です。
たとえば、貧血には鉄分を多く含むレバーが良いと言われますが、妊婦にはレバーの摂り過ぎはよくありません。
レバーには貧血に効果がある鉄分と共に、ビタミンAがたっぷり含まれていています。ビタミンといえども取り過ぎは胎児にとってよくありません。
ひじきや牛乳にも鉄分は、たっぷり含まれていますので、いろいろな食物から栄養を摂るように工夫し健康な赤ちゃんを産んで下さい。
        
        

            No.1 薬の飲み方
            No.2 薬を飲む時
            No.3 薬の保管  
            No.4 薬の剤形と特徴
            No.5 薬の相互作用
            No.6 薬の副作用  
            No.7 薬の飲み忘れ
            No.8 くすりの投与経路
            No.9 薬 用 量
            No.10 くすりの工夫(DDS)
            No.11 医療用医薬品と一般用医薬品
            No.12 妊娠とくすり
            No.13 かぜと薬
            No.14 花粉症とくすり
            No.15 めぐすりの話
           
        


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