今回は、クスリの効果を高めたり、副作用を抑えるために、工夫が施された飲み薬と貼り薬についてお話しします。
発 行:国立横浜病院薬剤科 1998年7月発行
◎くすりの工夫
最近になって、クスリがどのように体の中に入り、そして効果を現す場所へ到達し、最後に体の外へ排泄されていくかについて明らかになってきました。
そして、投与法などを工夫して、必要な部位に必要なだけの量を供給し、より効果的で副作用を防ごうとする研究が進み、見た目は普通の錠剤でもクスリを特殊な膜で覆ったりした特殊な加工がしてあったり、皮膚から薬剤を吸収させ飲み薬と同じ効果が得られる貼り薬などが登場するようになりました。
こうしたクスリの工夫は、ドラッグ−デリバリーシステム「薬物送達システム」(DDS)と呼ばれています。
◎腸溶製剤(腸で溶けるようにつくられたクスリ)
クスリの中には、胃の酸により分解しやすい成分や、胃に対して刺激のある成分が含まれているものがあります。
こうした性質の成分を安全で有効なクスリにするために、開発されたひとつの方法が腸溶製剤です。
腸溶製剤は、薬の成分が胃の中では溶けずに、小腸に入って溶けるように表面に特殊な膜(コーティング)が施してある錠剤や顆粒のことです。
腸溶製剤は、効果が減弱することを防いだり、胃に対する副作用を軽減することができますが、飲み方に注意も必要です。
(服用上の留意点)
* 牛乳などアルカリ性飲料で飲むと、コーティングが溶けてしまうおそれがあるので、同時に服用することは避けてください。
* クスリの効果が減弱したり、胃に対する刺激作用が現れる事があるので錠剤や顆粒を潰して飲んではいけません。
◎徐放製剤(徐々に成分を放出するようにつくられたクスリ)
病気やその症状によっては、クスリの効き目を長時間にわたって、同じように効かせる必要があることがあります。
そこで、クスリの効き目を長時間持続させるために、すぐに溶けて吸収させる部分と体の中でゆっくり溶けて吸収させる部分を合わせたクスリが徐放製剤です。
徐放製剤には、早く溶ける層とゆっくり溶ける層を重ね合わせた錠剤の他、溶ける時間の違う様々な粒を混ぜ合わせた錠剤、カプセル、顆粒や粉薬などがあります。
徐放製剤の開発により、明け方に発作を起こす狭心症や喘息の治療が容易になりました。
そのほかにも高血圧のクスリをはじめ、様々な分野のクスリに、徐放製剤が用いられています。
(服用上の留意点)
* 潰したり砕いたりして服用してはいけません。
急激にクスリが吸収され、クスリの作用が強く現れるおそれがあります。
* 徐放製剤は効き目が長いので一日の服用回数が少なくてすむ反面一度飲み忘れると、長時間クスリの効果が得られなくなるので、特に注意が必要です。
◎経皮吸収製剤(皮膚から薬の成分を吸収させるクスリ)
最近になって、貼り薬の粘着剤を工夫することにより、皮膚から薬の成分が吸収させ、飲み薬と同様の効果が得られるようにする方法が開発されました。
このような方法は、経皮吸収システム(TTS)と呼ばれています。
経皮吸収製剤は、徐々に皮膚から吸収されるため、長時間持続する性質があります。しかも通常、1日に1回貼るだけですむので、取り扱いもいたって簡単です。
また、胃腸などへの副作用が少なく、副作用が生じた場合でも、クスリをはがすことで、すぐに成分の吸収を止めることができる利点があります。
現在、発売されている経皮吸収剤は、心臓の発作予防薬と女性ホルモン剤だけですが、他の薬剤への応用が盛んに研究されているところです。
(使用上の留意点)
* 同じ場所に貼るとかぶれや湿疹がでることがあるので、貼る場所を 交換する度に変える必要があります。
* また他の筋肉のこりをほぐしたり、痛みをとる湿布薬と間違えることのないように、保管には十分注意しましょう。
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